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サイトマップ お分かりにならない点は、どうぞお問合せ下さいませ。 店主の振袖お見立て体験記

5) 東北の思い出

あなたの求めていた振袖はここにあったのです。

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ある日の事「たちばなやさんなら、気に入ったものがあると思いますよ」と聞いてご紹介を受けたS様親子がお見えになりました。

その後ご縁をいただき、何度もお店にいらっしゃるようになりました。

S様親子がお見えになるたびに、「どう?よさそうなものがあるかしら?」と言って、いつも熱心に着物の柄をご覧になるのが、S様親子の楽しみのようでした。

ある時、着物のクリーニングやお手入れもお受けして、お話しをお伺いすると、お母様は、こう言うのです。

「うちの娘がね、加賀友禅の振袖がいいって言うんですよ。それでね、ずいぶん探しているんだけど、なかなかないのよね。」

お嬢様が着物を着る機会があって、小紋などのおしゃれ着をよくお召しになっていらしゃるのですが、 気に入った振袖だけは、まだ揃っていないのでした。

「加賀友禅といってもどんな感じの振袖がいいんですか?」

「さて、ここにあるかしらね〜 」 と店内を見回すと、 

「ありましたよ、ちょうどこんな感じなのです。と近くにあった反物の色を指差して、

「これこれ、こんな色の加賀友禅の振袖をさがしているんですよ。」

なるほど〜 と思うような上品な中間色です。

グリーンともベージュともつかないような 柔らかい色目なんですね。

さて、お話しを聞いてみると、どうやら、こだわっているのは地色なのです。この色の加賀友禅の振袖はなかなかないというのです。

「ところで、加賀友禅と言っても、本加賀じゃなくてもいいんですよね?本加賀だったら値段も特別高いし、探すの難しいですよ。」

「ええ、そうです。本加賀じゃなくてもいいんです。加賀友禅の柄だったらいいんです。」

「それなら、京加賀といって、手描きではないけれども型染めした友禅の振袖が最近は出ていますから、デザインもとてもいいですよ。値段もものすごく安くは無いけれどもある程度予算の範囲で収まりますよ。物はいいから、S様のお好みにあうと思いますよ。ただし、色がそれだけ限定されるとなると、数は限られますからちゃんとうちで用意することができますよ」

とお話ししました。

「あ、そうですか〜それじゃお願いしてみましょうかね。特に急いではいないので、いいのが入ったらお電話してくださいね。」

そういって、S様親子は、振袖選びを当店にご依頼されたのでした。

すでに、着物や帯など、当店の柄粋のコーディネートがお気に入り頂き、意気投合しているお客様のことです。次の振袖も楽しみにしているようでした。

さて、これからが当店の工夫のしどころです。お客様のイメージをいかに形にしていくかが着物専門店の役割です。実は、このお客様が求めている京加賀の振袖は、京都でも創っているのですが、多く創られているのは、実際に新潟の十日町という地域なのです。ここは、友禅の産地でもあり、とてもいい柄が伝統的なすばらしい柄を作り続けているのです。トンやさんにも相談してみると、色がかなり限定されていることと、柄粋のイメージが私がよく把握しているということもあり、むしろたくさんの加賀友禅を現在作りつづけている十日町に行ったほうが早いのではないかという結論に達しました。
そこで、数日後、取引先の問屋さんの担当員と一緒に十日町の振袖メーカーにお伺いすることにしました。朝早く出発し、東北の十日町の駅についた頃は、すでに昼でした。曇天の曇り空は東北らしいさびしさを感じましたが、迎えいれてくれたのは駅前近くで頂いた「てんいそば」というとてもおいしいものでした。

珍しいおそばに関心して味わいながら、午後は振袖選びです。十日町にある振袖メーカーに案内してもらうと、その扉を開けた瞬間に広い会場に何百ともいえる数の振袖がありました。さて、ここから選ぶとなると大変です。

いったいどうしたものかと選びながら、よくみると確かに色も違い、柄も違います。これでは問屋さんも当店に送るにしてもわからないはずです。

わたしは、価格別柄粋別、色別と整理して膨大な数の振袖をかなりの時間をかけてみました。そして、お客様が求めている地色の振袖は、何枚もありました。ただし、どこか柄が微妙に違っているのです。

全部ご覧頂くにしても、お客様は迷うばかりですので、洗練された柄を一つ一つピックアップしていきました。そして、最後に残ったのは若草色とクリーム色の地色振袖が残りました。すでにS様のお好みを理解していた私は、この2枚だけを当店に送っていただくようにお願いして東北の地を発ちました。

それから6日後のことです。

「Sさん、ぴったりの振袖がございます。こちらでしたら大丈夫かと思いますよ」

そうお電話した翌日にS様親子はお店にやってこられました。
お店に着くなり、

「どう?いいのあった?」

いつもの調子で声を弾ませて、お話が始まると、私は「こんな感じがいいと思いますけど?」

と言って、その2枚の振袖を広げて見せました。

親子揃って、「あらいいじゃない! これならぴったりね!」と、歓声を上げるのでした。
若草色にするかクリーム色の地色にするかしばし考えていましたが、結局、最初の若草色の地色の加賀友禅をお選びいただきました。

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